ここでは、国際結婚のビザ、配偶者ビザについて説明します。
目次
1.国際結婚のビザ、配偶者ビザとは
国際結婚ビザという名前のビザ、在留資格はありません。ここでは、在留資格「日本人の配偶者等」,「永住者の配偶者等」のことを、配偶者ビザということにします。在留資格の「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の「等」には、子ども(養子も含む)も入るのですが、ここでは、子どもについては、説明を省略します。また、外国人同士の国際結婚の場合、どちらか一方が永住者であれば、他方は「永住者の配偶者」になります。外国人同士の国際結婚の場合で、いずれも永住者でない場合には、配偶者ビザは取れません。夫婦両方とも就労ビザを取るか、一方が就労ビザを取り、その配偶者が在留資格「家族滞在」を取ることになります。
2.配偶者ビザのメリット
2.1 就労ビザのような活動制限(就労上の制約)がない
就労系の在留資格、いわゆる就労ビザでは、在留資格ごとに就ける職務、すなわち、できる仕事が決まっていて、仕事が変わったら在留資格を変更しなければならなかったり、そもそも就労系の在留資格を取れない仕事(職務)が多くあります。
配偶者ビザの場合には、そのような制限がないのがメリットの一つです。仕事をやめてもビザが取り消されません。転職しても入管手続きが不要です。そのため、就労ビザを持っている外国人が日本人や永住者と結婚すると、通常は、配偶者ビザに変更します。もっとも、活動制限がないのは身分系ビザの特徴ですので、配偶者ビザに限らず、永住者ビザ、定住者ビザでも制限なく就職できます。
2.2 永住許可要件や帰化申請要件のハードルが下がる
外国人が永住ビザを取得したい場合、原則として、日本に引き続き10年以上在留している必要があります。配偶者ビザを持っている外国人の場合には、この要件が緩和され、実体を伴った結婚生活が3年以上継続し、引き続き日本に1年以上在留していることという要件と他の永住許可の要件を満たせば、永住ビザを取れます。
帰化申請についても、居住要件のハードルが下がります。
2.3 手続き上は、会社設立手続きが容易になる(経営管理ビザ不要)
配偶者ビザなど身分系の在留資格を持っている場合に共通のメリットですが、経営管理ビザ不要で、会社設立ができます。
3.配偶者ビザ申請のポイント
配偶者ビザの申請では、「質問書」という書類があり、それに回答しなければなりません。その質問内容は、「初めて知り合った時期」「場所」「結婚までのいきさつ」「紹介を受けたか」「紹介を受けたいきさつ」「離婚歴があるか」など、その他にも年月日を示しながら文書で説明するという形になります。また、2人の写真や、やりとりの記録(手紙やLINEなどのやりとりの記録)は、現実的には必須書類です。
配偶者ビザの申請手続きは、証明書類・立証資料をそろえる責任が申請者側にありますので、自分で手続きをすると思いのほか難しく、書類不備・説明不足で不許可になってしまうケースが目立ちます。正真正銘の結婚でも入管に偽装結婚を疑われると不許可になってしまいます。結婚の実態を伴っているということが正しく伝わるような書類・資料を用意する必要があります。
特に不許可になりやすく、専門家のサポートを受けたほうがよいケースというのは、次のような場合です。
・夫婦の年齢差が大きい場合
・結婚紹介所のお見合いによる結婚の場合
・出会い系サイトで知り合った場合
・日本人の配偶者側の収入が低い場合(アルバイト・フリーター・無職など)
・日本人の配偶者側に過去外国人との離婚歴が複数ある場合、またはその逆のパターンの場合
・出会いがスナック、キャバクラなどの水商売のお店の場合
・交際期間がかなり短い場合
・交際期間を証明できる写真をほとんど撮ってきていなかったので写真がほとんどない場合
・結婚式を行っていない場合
4.配偶者ビザを持っている方は、こんな点に注意しましょう。
4.1 結婚生活の実態が伴わなくなった場合
配偶者ビザは、夫婦が同居していることが要件の一つです。別居している場合には、結婚生活の実態が伴っていないとみなされ、そのままでは、配偶者ビザの更新が困難になります。正当な理由があれば、更新時にその正当な理由を説明し、入管が納得すれば、更新も可能となる場合がありますが、注意が必要です。また、結婚生活の実態が伴わなくなった場合には、永住ビザの取得要件である「実体を伴った結婚生活が3年以上継続し」という要件も満たさなくなりますので、将来永住ビザを取得したい場合には、この点、注意しましょう。
4.2 配偶者が無職になった場合や収入が極端に減った場合
外国人本人の収入だけで十分生活できる場合には問題ありませんが、そうではない場合には、日本人側が無職になった場合や収入が極端に減った場合、そのままでは、生活の安定性がないとみなされ、配偶者ビザの更新困難になります。次の更新のときまでに、再就職するか、少なくとも、ハローワークに行って仕事を探しているという状況にして、更新時には、その点を更新申請書類でしっかりと説明するようにしましょう。
4.3 離婚や死別した場合
配偶者ビザをお持ちの方が離婚したり死別したりすると、「日本人の配偶者」や「永住者の配偶者」の要件を満たさなくなります。そのままですぐに配偶者ビザ(在留資格)が取り消されるわけではありませんが、離婚または死別した後、そのまま6ヶ月以上経過して日本に在留している場合は、在留資格が取り消される場合がありますので、注意が必要です。必ず取消されるというものではなく、6ヶ月経過後はいつ取消されるかわからない状態になります。離婚や死別後に在留資格の有効期間が1年~2年残っていても、できるだけ早く他の在留資格に変更する手続きを考える必要があります。離婚または死別した場合、14日以内に入管に届出をする義務があります。
日本人の配偶者ビザをお持ちの外国人が日本人と離婚や死別した場合でも、また日本人と再婚すれば、次回の更新時に「在留資格更新許可申請」をすることになりますが、この場合、手続きは「在留資格更新許可申請」でも、相手が異なりますので、新規の申請の時と同じ審査内容となり、申請書類も新規申請と全く同じです。専門の行政書士に依頼する場合の料金も更新の料金ではなく、新規申請と同等の料金となります。
外国人女性が夫と離婚した場合には、すでに再婚相手が決まっていても、離婚時から100日経過しないと再婚できません(待婚期間、再婚禁止期間といいます)。この再婚禁止期間に配偶者ビザの有効期限が来てしまうという状況が発生する場合があります。その場合、離婚している状況のままでは配偶者ビザを更新できませんので、いったん帰国して「認定証明書交付申請」するか、婚約者と同居するなどして短期滞在の在留資格を取って再婚禁止期間を待つことになります。
再婚する予定がない場合、婚姻期間3年以上、日本国籍の子供がいる場合には、在留資格「定住者」に変更できる可能性があります。「定住者」の要件を満たさない場合には、就労ビザを検討する必要があるでしょう。
4.4 永住許可要件を満たすようになったら永住許可申請をするのがお勧め
上記、配偶者ビザのメリットで書いたとおり、日本人の配偶者ビザや永住者の配偶者ビザをお持ちの方は、10年以上日本に継続して在留していなくても、実体を伴った結婚生活が3年以上継続し、引き続き日本に1年以上在留しているという要件と、他の要件を満たせば、永住許可申請できます。そのため、離婚や死別の前に、早い段階で、永住許可申請をするのが安心です。
5.まとめ
配偶者ビザは、活動制限がない、永住許可要件や帰化要件が緩和されるなど、使い勝手の良いビザ(在留資格)です。その分、偽装結婚で配偶者ビザを取ろうとする人が少なくなく、入管に偽装結婚を疑われやすいので、真面目な結婚であっても申請書類の書き方によっては、不許可になりやすい在留資格でもあります。また、離婚や死別したらそのままでは取消になる可能性のある在留資格でもあります。配偶者ビザに関してお困りのことがありましたら、ぜひ、専門家である申請取次行政書士にご相談ください。