ここでは、自動車整備分野で特定技能外国人を雇用するにはどうしたらよいかを簡単に説明します。特定技能ビザ(在留資格「特定技能」)についての基本的なことはこちらをご覧ください。
受入れ企業の要件
まず、特定技能所属機関(受入れ企業)の要件を説明します。
業務区分該当性(従事する業務)
自動車整備分野の主たる業務は、自動車の日常点検整備,定期点検整備,分解整備です。この主たる業務とあわせて行う限りにおいて、当該業務に当該事業所において従事する日本人が通常従事することになる関連業務(整備内容の説明および関連部品の販売,清掃等)に付随的に従事することは差し支えありません。なお、後記受入れ機関適合性の1の要件を満たさない事業場における就労は、業務区分該当性がありません。
特定技能運用要領は、関連業務にあたりうる具体例として、(1) 整備内容の説明および関連部品の販売,(2)部品番号検索・部内発注作業,(3) 車枠車体の整備調整作業,(4) ナビ・ETC等の電装品の取付け作業,(5) 自動車板金塗装作業,(6) 洗車作業,(7) 下廻り塗装作業,(8) 車内清掃作業,(9) 構内清掃作業,(10) 部品等運搬作業,(11) 整備機器等清掃作業を挙げています。
受入れ機関適合性
受入れ機関は、下記1~5の事項等を遵守する旨の「自動車整備分野における特定技能外国人の受け入れに関する誓約書」を提出しなければならず、誓約事項を遵守できなくなった場合は、その旨を出入国在留管理庁長官及び国土交通大臣に対し報告することが求められます。
また、登録支援機関も、下記5を遵守する旨の「自動車整備分野における特定技能外国人の受け入れに関する誓約書」を提出しなければならず、誓約事項を遵守できなくなった場合は、その旨を出入国在留管理庁長官及び国土交通大臣に対し報告することが求められます。
1.地方運輸局長の認証を受けた事業場を有すること
事業場の認証要件
特定 技能所属機関は、受入れ機関適合性として、道路輸送車両法78条1項に基づく地方運輸局長の認証を受けた事業場を有することが求められ、特定技能外国人は、当該認証事業場(自動車整備工場)において業務に従事しなければなりません。事業場の認証要件として、道路運送車両法80条1項1号,道路輸送車両法施行規則57条6号に規定される従業員に対する整備士の要件(1級,2級または3級の自動車整備士の技能試験に合格した者の数が、従業員の数を4で除して得た数(その数に1未満の端数があるときは、これを1とされます。)以上であること)が課されます。自動車整備分野において求められる技能水準は、後述の特定技能外国人が有すべき技能水準の通り、(1) 自動車整備特定技能評価試験の合格,(2) 自動車整備士技能堰堤試験3級の合格または(3) 自動車整備分野に係る第2号技能実習の良好な修了であるところ、(1) 自動車整備特定技能評価試験にしか合格しておらず、自動車整備士技能検定試験3級に合格していない特定技能外国人や(3) 自動車整備分野に係る第2号技能実習の良好に修了しているものの自動車整備士技能検定試験3級に合格していない特定技能外国人は、上記の事業上の認証要件において整備士としてカウントできません(自動車整備士技能検定試験3級に合格指定特定技能外国人はカウントできます。)。従業員の数には、技能実習生および特定技能外国人もカウントされます。自動車分解整備事業者は、当該事業場に関し、道路輸送車両法80条1項1号の規定による基準に適合するように設備を維持し、および従業員を確保しなければなりません。事業場が当該基準を満たさなくなった場合は、改善命令(道路輸送車両法92条)や認証取り消し(道路輸送車両法93条1号)の対象となります。
在留資格「技能実習」の自動車整備職種・自動車整備作業においては、作業の定義として、「自動車整備作業を行う場合、道路輸送車両法第78条に基づき、地方運輸局長から認証を受けた自動車分解整備事業場における作業でなければならない。なお、対象とする自動車の種類が二輪自動車のみの自動車分解整備事業場は除くものとする。」とされています。それに対し、在留資格「特定技能」においては、地方運輸局長から認証を受けた自動車分解整備事業場であって、対象とする装置の種類が限定されている事業場や、対象とする自動車の種類が二輪自動車のみの事業場における業務も、自動車整備分野の業務に該当します。
地方運輸局長の認証を受けていない事業場における就労は、受入れ機関適合性を満たさず、在留資格「特定技能1号」に係る在留資格該当性がないため、不法就労活動です。よって、特定技能外国人において、地方運輸局長の認証を受けていない事業場であることに係る認識・認容がある場合には、特定技能外国人には資格外活動罪が成立します。地方運輸局長の認証を受けていない事業場であることに係る認識・認容が得意低技能外国人になかったとしても、就労させた特定技能所属機関には、不法就労助長罪が成立します。地方運輸局長の認証を受けた事業場を有することは、特定技能所属機関自身に係る事項であるため、当該要件を満たさないが故に不法就労活動に当たることを知らなかったことについて過失がないといえる場合は、基本的には想定できません。
2.協議会の構成員であること
特定技能所属機関が、国土交通省が設置する自動車整備分野特定技能協議会(以下、この文章において「協議会」といいます)。に加入することが必要です。初めて1号特定技能外国人を受け入れる場合には、当該特定技能外国人の入国後4か月以内に協議会に加入し、加入後は、協議会に対し、必要な協力を行わなければなりません。特定技能所属機関が、初めて自動車整備分野の特定技能外国人を受け入れる場合には、地方出入国在留管理局に対する在留所申請の際に、当該特定技能外国人の入国後4か月以内に協議会の構成員となる旨の誓約書の提出が必要です。入国後4か月以内に協議会に加入していない場合には、受け入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。
特定技能所属機関が、2回目以降に受け入れる特定技能外国人にかかる在留諸申請(初めて特定技能外国人を受け入れてから4か月以内の申請を除きます。)及び協議・連絡会の構成員となる旨の誓約書を提出して受け入れた特定技能外国人に係る在留期間更新許可申請の際には、協議・連絡会の構成員であることの証明書の提出が必要です。
3.協議会に対し、必要な協力を行うこと
特定技能所属機関は、上記2の協議会に対して、必要な協力を行わなければなりません。協議会に対して必要な協力を行わない場合には、受け入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。
4.国土交通省が行う調査または指導に対し、必要な協力を行うこと
特定技能所属機関は、国土交通省が行う調査または指導に対し、必要な協力を行わなければなりません。国土交通省御調査または指導に対し、必要な協力を行わない場合には、受入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。
5.登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託するに当たっては、上記2~4の条件をすべて満たし、かつ、自動車整備士1級・2級の資格者または自動車整備士養成施設において5年以上の指導に係る実務経験を有する者を置く登録支援機関に委託すること
特定技能所属機関が登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託する場合には、当該登録支援機関も、国土交通省が設置する協議会に加入する必要があります。
登録支援機関が初めて自動車整備分野において1号特定技能外国人の支援の全部を実施する場合には、当該1号特定技能外国人の入国後4か月以内に、協議会に加入する必要があります。登録支援機関が入国後4か月以内に協議会加入していない場合には、当該登録支援機関に全部委託した特定技能所属機関は、受入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。また、登録支援機関が協議会または国土交通省の調査や指導に対し、必要な協力を行わない場合には、当該登録支援機関に全部委託した特定技能所属機関は、受入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。
特定技能外国人が有すべき要件
特定技能外国人が有すべき技能水準
自動車整備業分野において特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人は、自動車整備業技能測定試験または自動車整備士技能検定試験3級の合格及び、国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)の合格、または、自動車整備職種・自動車整備作業の2号技能実習を良好に修了した者とされます。
18歳以上で、健康状態が良好であること
試験合格のルートでも、技能実習2号を良好に修了したルートのどちらのルートでも、本人の健康状態が良好であることが必要なので、在留資格の申請時に健康診断書が必要です。健康診断書の様式は、入国管理庁のホームページからダウンロードできます。
特定技能の在留資格で通算5年になっていないこと
特定技能1号の場合は、特定技能の在留資格で通算5年までしか在留できません。それを超えて在留資格の申請をしても許可を得られませんのでご注意ください。
特定技能2号について
特定技能2号は、2023年12月現在、なっている人がとても少ないですが、これからは徐々に増えていくと思われます。特定技能2号になると、在留期間の更新に上限がなくなり、扶養する配偶者・子の帯同が可能となるというメリットがあります。
雇用形態は、フルタイムの直接雇用に限られます。