ここでは、素形財産業分野で特定技能外国人を雇用するにはどうしたらよいかを簡単に説明します。
特定技能ビザ(在留資格「特定技能」)についての基本的なことはこちらをご覧ください。

受入れ企業の要件

まず、特定技能所属機関(受入れ企業)の要件を説明します。

特定技能所属機関の事業所に係る日本標準産業分類

 素形材産業分野については、特定産業分野該当性として、特定技能雇用契約に基づいて1号特定技能外国人がその活動を行う特定技能所属機関の事業所が、日本標準産業分類に掲げる産業のうち、主として次の(1)~(14)のいずれかに掲げるものを行っていることが求められます。このことは、契約適合性としても求められます。事業主に係る要件ではなく事業所に係る要件であることに注意してください。

素形材産業分野に該当する事業所に係る日本標準産業分類

(1) 2194 鋳型製造業(中子を含む)
(2) 225 鉄素形材製造業
(3) 235 非鉄金属素形材製造業
(4) 2424 作業工具製造業
(5) 2431 配管工事用付属品製造業(バルブ,コックを除く)
(6) 245 金属素形材製品製造業
(7)2465 金属熱処理業
(8) 2534 工業窯炉製造業
(9) 2592 弁・同附属品製造業
(10) 2651 鋳造装置製造業
(11)2691 金属用金型・同部分品・附属品製造業
(12)2692 非金属用金型・同部分品・附属品製造業
(13)2929 その他の産業用電気機械器具製造業(車両用,船舶用を含む)
(14)3295 工業用模型製造業

 上記の事業所要件を満たすことは、受入れ企業が、素形材産業業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書において誓約することになります(誓約事項2)。後記2の判断基準に基づき、事業所要件を満たさないにもかかわらず、同誓約書を提出して偽り、在留資格「特定技能1号」を取得した場合には、在留資格等不正取得罪が成立しますので、注意しましょう。

 事業所要件を満たさない事業所における就労は、特定産業分野該当性および契約適合性を満たさず、在留資格「特定技能1号」に係る在留資格該当性がないため、不法就労活動です。よって、特定技能外国人において、事業所要件を満たしていないことに係る認識がある場合には、特定技能外国人には資格外活動罪が成立します。事業所要件を満たしていないことに係る認識が特定技能外国人になかったとしても、就労させた特定技能所属機関には不法就労助長罪が成立します。事業所要件は、特定技能所属機関自身に係る事項であるため、当該要件を見たさないがゆえに不法就労活動に当たることを知らなかったことについて過失がないといえる場合は、基本的には想定できません。

1号特定技能外国人の受入れ後に当該1号特定技能外国人が業務に従事する事業所が変更した場合には、14日以内に特定技能雇用契約変更に係る届出が必要です。特定技能雇用契約書の別添の雇用条件書の「II.就業の場所」に、事業所名、所在地および連絡先を記入する欄があります。上記の特定技能雇用契約変更に係る届出を行った場合は刑事罰に処せられます。変更後の事業所も、主として上記の日本標準産業分類に掲げる産業のいずれかを行っている必要があります。

 上記の産業を行っているとは、1号特定技能外国人が業務に従事する事業所において、直近1年間で上記の(1)~(14)に掲げるものについて製造品出荷額等(要するに売上)が発生していることを指します。製造品出荷額等とは、直近1年間における製造品出荷額,加工賃収入額,くず廃物の出荷額およびその他の収入額の合計であり、消費税および酒税,たばこ税,揮発油税および地方揮発油税を含んだ額のことを指します。

業務区分該当性(従事する業務)

表 素形材産業分野の業務区分

項番a. 試験区分b. 業務区分
1製造分野特定技能1号評価試験(鋳造)鋳造(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、溶かした金属を型に流し込み製品を製造する作業に従事)
2製造分野特定技能1号評価試験(鍛造)鍛造(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、金属を打撃・加圧することで強度を高めたり、目的の形状にする作業に従事)
3製造分野特定技能1号評価試験(ダイカスト)ダイカスト(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、溶融金属を金型に圧入して高い精度の鋳物を短時間で大量に生産する作業に従事)
4製造分野特定技能1号評価試験(機械加工)機械加工(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、旋盤,フライス盤,ボール盤等の各種工作機械や切削工具を用いて金属材料等を加工する作業に従事)
5製造分野特定技能1号評価試験(金属プレス加工)金属プレス加工(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、金型を用いて金属材料にプレス機械で加重を加えて、曲げ,成型,絞り等を行い成形する作業に従事)
6製造分野特定技能1号評価試験(工場板金)工場板金(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、各種工業製品に使われる金属薄板の加工・組立てを行う作業に従事)
7製造分野特定技能1号評価試験(めっき)めっき(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、腐食防止等のため金属等の材料表面に薄い金属を皮膜する作業に従事)
8製造分野特定技能1号評価試験(アルミニウム陽極酸化処理)アルミニウム陽極酸化処理(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、アルミニウムの表面を酸化させ、酸化アルミニウムの被膜を生成させる作業に従事)
9製造分野特定技能1号評価試験(仕上げ)仕上げ(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、手工具や工作機械により部品を加工・調整し、精度を高め、部品の仕上げおよび組立てを行う作業に従事)
10製造分野特定技能1号評価試験(機械検査)機械検査(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、各種測定機器等を用いて機械部品の検査を行う作業に従事)
11製造分野特定技能1号評価試験(機械保全)機械保全(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、工場の設備機械の故障や劣化を予防し、機械の正常な運転を維持し保全する作業に従事)
12製造分野特定技能1号評価試験(塗装)塗装(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、塗料を用いて被塗装物を塗膜で覆う作業に従事)
13製造分野特定技能1号評価試験(溶接)溶接(指導者の指示を理解し、または、自らの判断により、熱または圧力もしくはその両者を加え部材を接合する作業に従事)

上記主たる業務とあわせて行う限りにおいて、当該業務に当該事業所において従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(鋳造の例:加工品の切削・バリ取り・検査業務,型の保守管理等)に付随的に従事することは差し支えありません。関連業務にあたりうるものとして、たとえば、(1) 原材料・部品の調達・搬送作業,(2) 各職種の前後工程作業,(3) クレーン・フォークリフト等運転作業,(4) 清掃・保守管理作業が想定されます。もっぱら関連業務に従事することは認められません。

受け入れ機関適合性

 受け入れ機関は、下記1~4の事項等を遵守する旨の「素形材産業分野における特定技能外国人の受け入れに関する誓約書」を提出しなければならず、誓約事項を遵守できなくなった場合は、その旨を出入国在留管理庁長官及び農林水産大臣に対し報告することが求められます。

1.協議・連絡会の構成員であること

 特定技能所属機関が、経済産業省が組織する製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会(以下、この文章において「協議・連絡会」といいます)。に加入することが必要です。初めて1号特定技能外国人を受け入れる場合には、当該特定技能外国人の入国後4か月以内に協議・連絡会に加入し、加入後は、協議・連絡会に対し、必要な協力を行わなければなりません。特定技能所属機関が、初めて特定技能外国人を受け入れる場合には、地方出入国在留管理局に対する在留所申請の際に、当該特定技能外国人の入国後4か月以内に協議・連絡会の構成員となる旨の誓約書の提出が必要です。入国後4か月以内に協議・連絡会に加入していない場合には、受け入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。

 特定技能所属機関が、2回目以降に受け入れる特定技能外国人にかかる在留所申請(初めて特定技能外国人を受け入れてから4か月以内の申請を除きます。)及び協議・連絡会の構成員となる旨の誓約書を提出して受け入れた特定技能外国人に係る在留期間更新許可申請の際には、協議・連絡会の構成員であることの証明書の提出が必要です。

2.経済産業所および協議・連絡会に対し、必要な協力を行うこと

 特定技能所属機関は、経済産業省または上記1の協議・連絡会の行う一般的な指導,報告の徴収,資料の要求,意見の徴収,現地調査その他の業務に対して、必要な協力を行わなければなりません。経済産業省および協議・連絡会に対し、必要な協力を行わない場合には、受け入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。

特定技能外国人が有すべき要件

試験に合格するか第2号技能実習を良好に修了していること

 産業機械製造業分野において特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人は、産業機械製造業特定技能1号技能測定試験の合格及び、国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)の合格が求められます。または、産業機械製造業分野の第2号技能実習を良好に修了していることが求められます。

 技能実習2号移行対象職種において習得する技能との具体的な関連性は、下記の表のとおりです。

a. 業務区分b.技能実習2号移行対象職種
職種作業
鋳造鋳造鋳鉄鋳物鋳造
非鉄金属鋳物鋳造
鍛造鍛造ハンマ型鍛造
プレス型鍛造
ダイカストダイカストホットチャンバダイカスト
コールドチャンバダイカスト
機械加工機械加工普通旋盤
フライス盤
数値制御旋盤
マシニングセンタ
金属プレス加工金属プレス加工金属プレス
工場板金工場板金機械板金
めっきめっき電気めっき
溶融亜鉛めっき
アルミニウム陽極酸化処理アルミニウム陽極酸化処理陽極酸化処理
仕上げ仕上げ治工具仕上げ
金型仕上げ
機械組立て仕上げ
機械検査機械検査機械検査
機械保全機械保全機械系保全
塗装塗装建築塗装
金属塗装
鋼橋塗装
噴霧塗装
溶接溶接手溶接
半自動溶接

18歳以上で、健康状態が良好であること

試験合格のルートでも、技能実習2号を良好に修了したルートのどちらのルートでも、本人の健康状態が良好であることが必要なので、在留資格の申請時に健康診断書が必要です。健康診断書の様式は、入国管理庁のホームページからダウンロードできます。

特定技能の在留資格で通算5年になっていないこと

 特定技能1号の場合は、特定技能の在留資格で通算5年までしか在留できません。それを超えて在留資格の申請をしても許可を得られませんのでご注意ください。

特定技能2号について

 特定技能2号は、2023年12月現在、なっている人がとても少ないですが、これからは徐々に増えていくと思われます。特定技能2号になると、在留期間の更新に上限がなくなり、扶養する配偶者・子の帯同が可能となるというメリットがあります。

雇用形態は、フルタイムの直接雇用に限られます。