ここでは、農業分野で特定技能外国人を雇用するにはどうしたらよいかを簡単に説明します。特定技能ビザ(在留資格「特定技能」)についての基本的なことはこちらをご覧ください。
目次
- 受入れ企業の要件
- 業務区分該当性(従事する業務)
- 受入れ機関適合性
- 1.1号特定技能外国人を直接雇用する場合は、労働者を6か月以上継続して雇用した経験を有すること
- 2.1号特定技能外国人を労働者派遣の対象とする場合は、労働者を6か月以上継続して雇用した経験を有する者または一定の講習を受講した者を派遣先責任者として専任している者に労働者派遣をすることとしていること
- 3.協議会の構成員であること
- 4.協議会に対し、必要な協力を行うこと
- 5.1号特定技能外国人を労働者派遣の対象とする場合は、協議会に必要な協力を行う者に労働者派遣をすることとしていること
- 6.登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託するに当たっては、協議会に必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
- 特定技能外国人が有すべき要件
- 雇用形態について
受入れ企業の要件
まず、特定技能所属機関(受入れ企業)の要件を説明します。
業務区分該当性(従事する業務)
農業者(農家・農業法人)のみならず、農業者を構成員とする団体も、受入れ機関(特定技能所属機関)として特定技能外国人を雇用することができます。そして、特定技能外国人が従事する業務には、特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は、派遣先事業者)が受託して行うものを含みます。JA(農業協同組合)等が雇用する場合、JA等が複数の組合員から農業の業務を受託することで、特定技能外国人は複数の農業者の圃場等で業務に従事することができます。この場合、農業者は、特定技能外国人に対して指揮命令を行うことはできず、業務を受託したJA等が指揮命令を行う必要があります。
全国各地で圃場等を運営している農業者・団体が雇用する場合には雇用主を変更しない限り、特定技能外国人は、全国各地の圃場等で業務に従事することができます。ただし、事業所が変更になる場合は、特定技能所属機関が特定技能雇用契約の変更に係る届出を行わなければなりません。雇用牛を変更する場合は、在留資格変更許可を受ける必要があります。また、農業分野では派遣永代による受け入れが認められているため、農業団体の全国組織が派遣事業者となり、特定技能外国人を雇用・派遣する事で、特定技能外国人は全国各地で業務に従事することができます。ただし、派遣先が変更になる場合は、特定技能所属機関(派遣元)が特定技能雇用契約の変更に係る届出を行わなければなりません。
農業分野の主たる業務は、農業技能測定試験の試験区分に対応し、それぞれ以下の通りです。
農業技能測定試験(耕種農業全般)の合格者の主たる業務
耕種農業全般(栽培管理,農作物の集出荷・選別等)
栽培管理の業務が主として従事する業務に必ず含まれていなければなりません。また、技能試験の合格または技能実習2号の良好な修了により確認された技能を用いて、栽培管理、農産物の集出荷・選別等の業務に幅広く従事する必要があります。農作物の選別には、選果も含まれます。ただし、上記の通り、特定技能外国人がその在留期間中に主として従事する業務には、栽培管理の業務が必ず含まれている必要がありますので、在留期間中に「選果」の作業のみに従事することはできません。
農業技能測定試験(畜産農業全般)の合格者の主たる業務
畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)
飼養管理の業務が主として従事する業務に必ず含まれていなければなりません。飼養管理には、酪農ヘルパー組織が行う業務も含まれます。また、技能試験の合格または技能実習2号の良好な修了により確認された技能を用いて、飼養管理、畜産物の集出荷・選別等の業務に幅広く従事している必要があります。
関連業務
上記主たる業務とあわせて行う限りにおいて、当該業務に当該事業所において従事する日本人が通常従事することになる関連業務(農畜産物の製造・加工,運搬,販売の作業,冬場の除雪作業等)に付随的に従事することは差し支えありません。特定技能運用要領は、関連業務にあたりうる具体例として、(1) 特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)が生産した農畜産物を原料または材料の一部として使用する製造または加工の作業,(2)特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)による農畜産物の生産に伴う副産物(稲わら、家畜排泄物等)を原料または材料の一部として試用する製造または加工の作業,(3)農畜産物(特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)が生産した農畜産物が含まれる場合に限ります。)の運搬、陳列または販売の作業,(4) 農畜産物を現業または材料として製造され、または加工された物(特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)が生産した農畜産物が含まれる場合に限ります。)の運搬、陳列または販売の作業、(5) 農畜産物の生産に伴う副産物を原料または材料として製造され、または加工された物(特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)が生産した農畜産物の生産に伴う副産物を原料または材料として製造され、または加工された物(堆肥等の肥料、飼料等)が含まれる場合に限ります。)の運搬、陳列または販売の作業,(6) その他特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者)で耕種農業または畜産農業の業務に従事する日本人が通常従事している作業に(畜産脳頂と耕種農業を複合経営している特定技能所属機関(労働者派遣形態の場合は派遣先事業者))おいて畜産農業の技能を有する特定技能外国人が耕種農業の作業に従事する場合、冬場の除雪作業に従事する場合等)を挙げています。
受入れ機関適合性
特定技能所属機関は、下記1~6の事項等を遵守する旨の「農業分野における特定技能外国人の受け入れに関する誓約書」を提出しなければならず、誓約事項を遵守できなくなった場合は、その旨を出入国在留管理庁長官及び農林水産大臣に対し報告することが求められます。
派遣先事業者は、下記2および4の事項等を遵守する旨の誓約書を提出なければならず、誓約事項を遵守することができなくなった場合は、その旨を農林水産大臣および特定技能所属機関に対し報告することが求められます。
また、登録支援機関も、下記4を遵守する旨の「農業分野における特定技能外国人の受け入れに関する誓約書」を提出しなければならず、誓約事項を遵守できなくなった場合は、その旨を出入国在留管理庁長官及び農林水産大臣に対し報告することが求められます。
1.1号特定技能外国人を直接雇用する場合は、労働者を6か月以上継続して雇用した経験を有すること
農業者等が特定技能所属機関として1号特定技能外国人を直接雇用する場合は、当該農業者等は、過去五年以内に、労働者(技能実習生を含みます。)を少なくとも6か月以上継続して雇用した経験がなければなりません。
本要件は、雇用する外国人に対して適切な労務管理を行い農業現場において適切な外国人の受け入れを図ることを目的としており、雇用経験には、技能実習生の雇用も含まれます。同一の者を継続して6か月以上雇用した経験があることが必要です。
2.1号特定技能外国人を労働者派遣の対象とする場合は、労働者を6か月以上継続して雇用した経験を有する者または一定の講習を受講した者を派遣先責任者として専任している者に労働者派遣をすることとしていること
労働者派遣による場合には、派遣先は、過去5年以内に、労働者(技能実習生を含みます。)を少なくとも6か月以上継続して雇用した経験があるか、または、派遣先責任者講習その他労働者派遣法における派遣先の講ずべき措置等の解説が行われる講習を受講した者を派遣先責任者として専任していることが必要となります。
3.協議会の構成員であること
特定技能所属機関が、農林水産省が設置する農業特定技能協議会(以下、この文章において「協議会」といいます)。に加入することが必要です。初めて1号特定技能外国人を受け入れる場合には、当該特定技能外国人の入国後4か月以内に協議会に加入し、加入後は、協議会に対し、必要な協力を行わなければなりません。特定技能所属機関が、初めて農業分野の特定技能外国人を受け入れる場合には、地方出入国在留管理局に対する在留所申請の際に、当該特定技能外国人の入国後4か月以内に協議会の構成員となる旨の誓約書の提出が必要です。入国後4か月以内に協議会に加入していない場合には、受け入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。
特定技能所属機関が、2回目以降に受け入れる特定技能外国人にかかる在留諸申請(初めて特定技能外国人を受け入れてから4か月以内の申請を除きます。)及び協議・連絡会の構成員となる旨の誓約書を提出して受け入れた特定技能外国人に係る在留期間更新許可申請の際には、協議会の構成員であることの証明書の提出が必要です。
4.協議会に対し、必要な協力を行うこと
特定技能所属機関は、上記3の協議会に対して、必要な協力を行わなければなりません。協議会に対して必要な協力を行わない場合には、受け入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。
5.1号特定技能外国人を労働者派遣の対象とする場合は、協議会に必要な協力を行う者に労働者派遣をすることとしていること
労働者派遣による場合には、派遣先は、協議会に対し、必要な協力を行うものでなければなりません。
6.登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託するに当たっては、協議会に必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
特定技能所属機関が登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託する場合には、当該登録支援機関は、農林水産省が設置する協議会対し、必要な協力を行うものでなければなりません。
特定技能外国人が有すべき要件
特定技能外国人が有すべき技能水準
農業分野において特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人は、農業技能測定試験(耕種農業全般)または農業技能測定試験(畜産農業全般)の合格及び、国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)の合格、または、農業分野の2号技能実習を良好に修了した者とされます。農業分野の2号技能実習を良好に修了した者は、試験は免除されます。
18歳以上で、健康状態が良好であること
試験合格のルートでも、技能実習2号を良好に修了したルートのどちらのルートでも、本人の健康状態が良好であることが必要なので、在留資格の申請時に健康診断書が必要です。健康診断書の様式は、入国管理庁のホームページからダウンロードできます。
特定技能の在留資格で通算5年になっていないこと
特定技能1号の場合は、特定技能の在留資格で通算5年までしか在留できません。それを超えて在留資格の申請をしても許可を得られませんのでご注意ください。
特定技能2号について
特定技能2号は、2023年12月現在、なっている人がとても少ないですが、これからは徐々に増えていくと思われます。特定技能2号になると、在留期間の更新に上限がなくなり、扶養する配偶者・子の帯同が可能となるというメリットがあります。
雇用形態について
雇用形態は、直接雇用だけでなく、派遣も認められます。派遣が認められる理由としては、農業分野においては、冬場は農作業ができないなど季節による作業の繁閑があること、同じ地域であっても、作目による収穫や定植等の農作業のピーク時が異なるといった特性があり、農繁期の労働力の確保や複数の産地間での労働力の融通といった農業現場のニーズに対応するため、農業分野の事業者による直接雇用形態に加えて、労働者派遣形態により1号特定技能外国人を受入れることが不可欠であるから、とされます。