ここでは、造船・舶用工業分野で特定技能外国人を雇用するにはどうしたらよいかを簡単に説明します。特定技能ビザ(在留資格「特定技能」)についての基本的なことはこちらをご覧ください。
目次
受入れ企業の要件
まず、特定技能所属機関(受入れ企業)の要件を説明します。
特定産業分野該当性
造船・舶用工業分野の対象は、(1) 造船業 (2) 舶用工業のいずれかに該当する事業者が行う業務とされます。よって、特定産業分野該当性として、造船・舶用工業分野に係る1号特定技能所属機関は、(1) 造船業 (2) 舶用工業のいずれかに該当する事業者である必要があります。
(1)造船業
(1) 造船法6条1項1号または2号の届出を行っている者
(2) 小型船舶造船業法4条の登録を受けている者
(3) 上記(1) または(2)の者からの委託を現に受けて船体の一部の製造または修繕を行う者
(2)舶用工業(上記(1)の造船業に該当する者を除きます。)
(1) 造船法6条1項3号または4号の届出を行っている者
(2) 船舶安全法6条の2の事業場の認定を受けている者
(3) 船舶安全法6条の3の整備規程の認可を受けている者
(4) 船舶安全法6条の3の事業場の認定を受けている者
(5) 船舶安全法6条の4の型式承認を受けている者
(6)海洋汚染等および海上災害の防止に関する法律の規定に基づき、上記(2)から(5)までに相当する制度の適用を受けている者
(7)産業標準化法30条1項の規程に音月、部門記号Fに分類される鉱工業品に係る日本産業規格について登録を受けた者の認証を受けている者
(8)船舶安全法2条1項に掲げる事項に係る物件(構成部品等を含みます。)の製造または修繕を行う者
(9)造船造機統計調査規則5条2項に規定する船舶用機関または船舶用品(構成部品等を含みます。)の製造または修繕を行う者であって同規則に基づき調査票の提出を行っている者
(10)上記以外で、(1)から(9)までに規定する者に準ずる者として国土交通省海事局船舶産業課長が認める者。
業務区分該当性(従事する業務)
造船・舶用工業分野の主たる業務は、特定技能外国人が有すべき技能水準の試験区分に対応し、それぞれ、下表の業務区分の欄に掲げる業務です。
項番 | a. 試験区分 | b. 業務区分 |
1 | 造船・舶用工業分野特定技能1号試験(溶接) | 溶接(手溶接,半自動溶接) |
2 | 造船・舶用工業分野特定技能1号試験(塗装)または技能検定3級(塗装) | 塗装(金属塗装作業,噴霧塗装作業) |
3 | 造船・舶用工業分野特定技能1号試験(鉄工)または技能検定3級(鉄工) | 鉄工(構造物鉄工作業) |
4 | 造船・舶用工業分野特定技能1号試験(仕上げ)または技能検定3級(仕上げ) | 仕上げ(治工具仕上げ作業,金型仕上げ作業,機械組立仕上げ作業) |
5 | 造船・舶用工業分野特定技能1号試験(機械加工)または技能検定3級(機械加工) | 機械加工(普通旋盤作業,数値制御旋盤作業,フライス盤作業,マシニングセンタ作業) |
6 | 造船・舶用工業分野特定技能1号試験(電気機器組立て)または技能検定3級(電気機器組立て) | 電気機器組立て(回転電機組立て作業,配電盤・制御盤組立て作業,開閉制御器具組立て作業,回転電機巻線製作作業) |
上記の主たる業務とあわせて行う限りにおいて、当該業務に当該事業所において従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(資材の運搬、清掃等)に付随的に従事することは差し支えありません。
特定技能運用要領は、関連業務にあたりうる具体例として、(1) 読図作業,(2)作業工程管理,(3) 検査(外観、寸法、材質、強度、非破壊、耐圧気密等),(4) 機器・装置・工具の保守管理,(5) 機器・装置・運搬機の運転,(6) 資材の材料管理・配置,(7) 部品・製品の養生,(8) 足場の組立て・解体,(9) 廃材処理,(10) 梱包・出荷,(11) 資材・部品・製品の運搬,(12) 入出涅,(13) 清掃を挙げています。
受入れ機関適合性
受入れ機関は、下記1~4の事項等を遵守する旨の「造船・舶工業分野における特定技能外国人の受け入れに関する誓約書」を提出しなければならず、誓約事項を遵守できなくなった場合は、その旨を出入国在留管理庁長官及び国土交通大臣に対し報告することが求められます。
また、登録支援機関も、下記5を遵守する旨の「造船・舶工業分野における特定技能外国人の受け入れに関する誓約書」を提出しなければならず、誓約事項を遵守できなくなった場合は、その旨を出入国在留管理庁長官及び国土交通大臣に対し報告することが求められます。
1.協議会の構成員であること
特定技能所属機関が、国土交通省が設置する造船・舶工業分野特定技能協議会(以下、この文章において「協議会」といいます)。に加入することが必要です。初めて1号特定技能外国人を受け入れる場合には、当該特定技能外国人の入国後4か月以内に協議会に加入し、加入後は、協議会に対し、必要な協力を行わなければなりません。特定技能所属機関が、初めて造船・舶工業分野の特定技能外国人を受け入れる場合には、地方出入国在留管理局に対する在留所申請の際に、当該特定技能外国人の入国後4か月以内に協議会の構成員となる旨の誓約書の提出が必要です。入国後4か月以内に協議会に加入していない場合には、受け入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。
特定技能所属機関が、2回目以降に受け入れる特定技能外国人にかかる在留諸申請(初めて特定技能外国人を受け入れてから4か月以内の申請を除きます。)及び協議会の構成員となる旨の誓約書を提出して受け入れた特定技能外国人に係る在留期間更新許可申請の際には、協議会の構成員であることの証明書の提出が必要です。
2.協議会に対し、必要な協力を行うこと
特定技能所属機関は、上記2の協議会に対して、必要な協力を行わなければなりません。協議会に対して必要な協力を行わない場合には、受け入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。
3.国土交通省が行う調査または指導に対し、必要な協力を行うこと
特定技能所属機関は、国土交通省が行う調査または指導に対し、必要な協力を行わなければなりません。国土交通省御調査または指導に対し、必要な協力を行わない場合には、受入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。
4.登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託するに当たっては、上記1~3の条件をすべて満たす登録支援機関に委託すること
特定技能所属機関が登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託する場合には、当該登録支援機関も、国土交通省が設置する協議会の構成員となる旨の誓約書の提出が必要です。
登録支援機関が初めて造船・舶工業分野において1号特定技能外国人の支援の全部を実施する場合には、当該1号特定技能外国人の入国後4か月以内に、協議会の構成員となる旨の誓約書の提出が必要です。登録支援機関が入国後4か月以内に協議会の構成員となっていない場合には、当該登録支援機関に全部委託した特定技能所属機関は、受入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。また、登録支援機関が協議会または国土交通省の調査や指導に対し、必要な協力を行わない場合には、当該登録支援機関に全部委託した特定技能所属機関は、受入れ機関適合性を満たさず、在留資格該当性がないことになります。そのため、特定技能外国人の受け入れができないこととなり、その状態で特定技能外国人に就労させる場合は、不法就労助長罪が成立します。
特定技能外国人が有すべき要件
特定技能外国人が有すべき技能水準
造船・舶工業分野分野において特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人は、上記表に示す試験の合格及び、国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)の合格、または、造船・舶工業分野の2号技能実習を良好に修了した者とされます。
18歳以上で、健康状態が良好であること
試験合格のルートでも、技能実習2号を良好に修了したルートのどちらのルートでも、本人の健康状態が良好であることが必要なので、在留資格の申請時に健康診断書が必要です。健康診断書の様式は、入国管理庁のホームページからダウンロードできます。
特定技能の在留資格で通算5年になっていないこと
特定技能1号の場合は、特定技能の在留資格で通算5年までしか在留できません。それを超えて在留資格の申請をしても許可を得られませんのでご注意ください。
特定技能2号について
特定技能2号の主たる業務は、溶接(手溶接,半自動溶接)です。
特定技能2号は、2023年12月現在、なっている人がとても少ないですが、これからは徐々に増えていくと思われます。特定技能2号になると、在留期間の更新に上限がなくなり、扶養する配偶者・子の帯同が可能となるというメリットがあります。
雇用形態は、フルタイムの直接雇用に限られます。