たとえば、中国料理,インド料理,タイ料理,イタリア料理などの外国料理の外国人調理師に必要なビザが技能ビザ(在留資格「技能」)です。技能ビザでできる職業としては、代表的なのは外国料理の調理師,コック,料理人ですが、その他に、スポーツ指導者,パイロット,調教師,ワインのソムリエなどが挙げられます。
ここでは、技能ビザ(在留資格「技能」)について取得要件や注意事項を中心に説明します。
目次
1.技能ビザでできる職種
技能ビザとは、一般には、熟練した技能を持つ外国人が取得するビザです。
技能ビザでできる職種としては、代表的なのは中国料理,インド料理,タイ料理,イタリア料理などの外国料理の調理師,コック,料理人ですが、その他に、外国特有の建築土木の大工,貴金属・毛皮の技師,パイロット,スポーツ指導者,調教師,ワインのソムリエなどが挙げられます。
技能で代表的なのは、外国料理の調理師,料理人,コックです。具体的には、中国料理専門店,インド料理専門店,イタリア料理専門店,フランス料理専門店,タイ料理専門店,ベトナム料理専門店,韓国料理専門店などで勤務する外国人調理師,料理人,コックが対象となります。その外国専門料理の調理師等として勤務していることが重要です。料理店のホールや接客対応をしていては技能ビザは取得できません。
また、お店は、外国専門料理店であることが必要で、日本の中華料理屋さんとかラーメン店、日本料理店、居酒屋勤務では、技能ビザは取得できません。
2.技能ビザの取得要件
2.1 その職種での実務経験が10年以上あること
たとえば、中国料理の調理師の場合、本国(中国)での中国料理の調理師としての実務経験が10年以上あることが必要です。熟練した技能があるかどうかの要件ということです。
実務経験は、この場合、中国料理の調理師としての実務経験でなければなりませんが、実務経験には、中国の教育機関で調理や食品製造に関する科目を専攻した期間を含めることが可能です。
中国以外の国でも同様ですが、タイ料理の調理師の場合には、実務経験は5年以上でOKです。ただし、来日する直前までタイでタイ料理人として働いている必要があります。タイ料理人に関してはタイの調理師資格を所有している必要があります。タイの他の国の料理人は必ずしも調理師資格が必要というわけではないということと異なる取り扱いです。
実務経験・業務内容の証明は、本国の専門料理店での調理師としての在職証明書等とその公証書等(いずれも本国のもので、日本語への翻訳が必要)で行います。在職証明書には店名(会社名)、電話番号、住所、職種、実務経験年数が記載されている必要があります。雇用理由書等で実務経験・業務経験をしっかりと説明していくことも重要です。調理師として働いているところの写真があると説得力が増します。
本国の専門料理店での調理師としての在職証明書が取れない場合、たとえば、その会社・お店が倒産して連絡が取れないとか、けんかして退職したから在職証明書を取れないなどの場合は、その会社・お店での実務経験は証明するのが非常に困難になります。専門学校などの教育機関で調理や食品製造に関する科目を専攻した期間を含め、他の会社・お店での実務経験で合計10年以上証明できれば大丈夫です。ただし、1~2ヶ月不足しても不許可になりますので、正確に10年以上が必要であると考えてください。
なお、スポーツの指導に係る技能の場合には、10年以上ではなく3年以上の実務経験が必要です。その3年間には、外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した機関および報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間も含みます。
パイロット、航空機の操縦に係る技能については、250時間以上の飛行経験を有する者で、航空法第2条第18項に規定する航空輸送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事する者となっています。
2.2 会社側は、経営の安定性・継続性があること
本人には、実務経験が必要ですが、会社側は、経営の安定性・継続性が審査されます。これらを十分に立証することが重要となります。設立したての会社の場合でも申請はできますが、損益計算を含めた事業計画書が必要となります。
オープン前でも申請は可能ですが、飲食店営業許可を取得済みであることは申請のため最低条件となります。
2.3 本人と会社との間に雇用契約などの契約があること
本人と会社との間に雇用契約などの契約があることが必要です。通常は、雇用契約書を提出します。安定的・継続的に勤務できること、外国人を不当に差別していないことが必要です。
2.4 その職種での十分な業務量があること、その職種以外の業務をしないこと
たとえば「その職種」が調理師の場合、店舗の規模に対して調理師が多すぎると、十分な業務量がないのではないかと疑われます。また、接客対応の人員を十分確保していないと、調理の仕事がないときに接客対応をするのではないか、などと、入管に疑われかねません。十分な業務量があること、他の業務(職務)をしないことを立証するために、シフト表などが求められる場合もあります。 1店舗に対して何名まで調理師を呼べるか、調理師の技能ビザを取れるか、というのは、お店の規模,座席数,売上,営業日,営業時間,事業計画によって変わってきます。その人数の調理師を雇用する必要性が立証できれば良いです。
また、技能ビザでは、その外国料理専門店の調理師の仕事はできますが、経営管理の仕事はできません。経営管理の仕事をする場合には、経営管理ビザ(在留資格「経営管理」)の取得が必要です。
3.技能ビザの転職
技能ビザで転職をすることも可能ですが、技能ビザを取得した時に勤務していたお店・会社で、その時の職務で、審査されて許可が得られた技能ビザですので、転職した場合には、新たなお店・会社で、新たな職務で、適法に勤務できない場合もあります。したがって、転職後も適法に勤務できることを確認することが必要となります。
転職者本人の在留期限がまだ十分に残っている場合は「就労資格証明書交付申請」をします。在留期限がほとんど残っていない場合には、「就労資格証明書交付申請」をせずに、更新申請の際に転職後の会社情報を提出し許可をもらいます。転職後の更新申請は、新規の申請と同じ審査内容となりますので、転職なしの更新申請とは異なり、審査に時間がかかりますから、期間に余裕をもって更新申請します。
また、転職した場合には、14日以内に入管に本人が「所属機関の変更の届出」をすることが必要です。この手続きは必須であり、この届出を怠ると次回のビザ更新の際に審査上不利に働いてしまいます。
技能ビザで代表的な調理師の転職ですが、たとえば、イタリア料理専門店に勤務するイタリア料理調理師が、別のイタリア料理専門店に勤務することは、一般的にOKですが、別の国の料理、たとえば、韓国料理専門店に調理師として勤務することはできません。
4.技能ビザで注意すべきこと
技能ビザは、入管の審査が厳しいですので、入管に疑われないように、申請書類をしっかりと準備して申請することが必要です。虚偽申請はしてはいけません。不利なことがあっても、正直に申請することが必要です。入管では、在職証明書に記載のお店・会社の電話番号に電話をかけて調査していますので、その電話で、その外国人本人が在職していたことが確認できないと不許可の一因となるようです。
また、技能ビザは、熟練を要する技能とその経験を認められて、その職務について許可を得られているので、異なる職務では、仕事をすることが認められません。
また、技能ビザを最初に取得する時(初めて海外から日本に来る時)は、本人の実務経験の証明が最重要で、そのほかに勤務先店舗と会社の情報が重要でした。しかし、技能ビザ更新の際は、給料が予定どおり支払われているか、それに伴い住民税などはきちんと納付されているか、職務内容は変わってないか、会社の経営状態は悪化していないかなどが審査ポイントとなります。
5.まとめ
技能ビザの説明、いかがでしたでしょうか? 技能ビザは、「技術・人文知識・国際業務」のような他の就労ビザと異なり、学歴が不要ですが、実務経験が10年以上必要です(タイ料理の場合は5年以上)。そのため、多くの場合、最初に技能ビザを取得するときは、海外からの呼び寄せになります。日本にいる留学生が技能ビザを取得するということはありません。日本の料理専門学校を出た留学生は通常は技能ビザを取得できません。
日本の企業・外国料理専門店が、その専門料理の外国人調理師を雇う場合、認定(呼び寄せ)で技能ビザを取得するか、すでに技能ビザを持っている外国人を雇う(本人にとっては転職)ことになります。
スポーツ指導者として雇う場合の技能ビザの要件は、実務経験が10年上ではなく、3年以上です(外国人をスポーツ指導者として雇用したいときは)。